「うふふー、雨雨ー」
「ユウちゃん・・・楽しそうだね」
「うんっ♪楽しいよ?レイくんと一緒だから」
「・・・そう、かな」
「雨も楽しいし、レイくんも楽しいデスっ」
「・・・・・・」
梅雨の長雨で湿った地面を、ふたごのユウレイが仲良く歩いて(?)いた。
いつになく楽しそうな姉に、弟はふぅとため息をつく。
そして空を見上げれば、しっとりと濡れた木々に囲まれた曇り空が見えた。
「どしたのレイくん?」
「んーん、なんでもないよ」
「じゃあ久しぶりに手をつなぐのデス!」
「・・・うん。いいよ」
手をつなぐ・・・とは言っても、お互いに死んだ身、体温や感覚はない。
そっと差し出された弟の手をまじまじと見て、姉もそっと手を出す。
ふたりの手が重なった。
冷たくもないし、暖かくもないし、ましてや感覚など存在しないのに、なぜ彼らは手を取りあうのか。
「うふふふ」
「へんなユウちゃん」
「かえるのうたを輪唱しようじゃありませんか!」
「なんで急に・・・」
「かーえーるーのーうたーがーっ」
「・・・かーえーるーのーうーたーがー」
「もっと楽しくっ!きーこーえーてーくーるーよーっ♪」
「・・・・・・ユウちゃん」
「もー、レイくんのってよーっ」
「ユウちゃん」
めずらしく真剣な弟に、姉はきょとんとその顔を見る。
向こう側が透けて見える、実体のない顔。
それはまた、彼女も同じことであった。
「たんじょうびおめでとう」
「・・・あっ!」
「忘れてたでしょ」
「うんっ、忘れてた!レイくんもおめでとさんさん☆」
もう身は朽ち果てたというのに。
もう存在しないようなモノであるというのに。
ふたりは互いの永遠を、願う。
「「ハッピーバースデー」」
ねえ、成仏してしまったら、
ぼくらはどこに行くのだろう?
どこに行ったっていっしょだよ!
ねっ、レイくん
・・・ユウちゃんがそういうなら、
そうかもしれないね
おたがいを想う。
きっとぼくらは、いつまでもいっしょ。
END.